ここでは日本の主な古典作品をジャンルごとに紹介します。また、ジャンルは大まかなもので他サイト様のものと食い違う場合がありますが、ご容赦下さい。
歴史書とは、歴史を記述した書物のこと。想像的要素の極力排除さえているもののこと。
作品名 | 作者 | 作品紹介 |
---|---|---|
古事記 | 太安万侶? | 日本現存の最古の歴史書。天地の始まり〜推古天皇の時代までが記されている。上巻は編纂の由来を書いた序論と天地創造〜第一代神武天皇誕生までの神話。中巻は神武天皇の遠征〜十五代応神天皇までの歴史・伝説。下巻は十六代仁徳天皇〜三十三代推古天皇までの歴史・系譜と物語が記されている。上・中巻は神話・伝説要素が強く、下巻は人の世の物語としての性格が強い。 |
和歌集とは、和歌を編集したもの。帝の命で編纂されたものを"勅撰和歌集"と呼ぶ。和歌集によってそれぞれ作風が異なる。
作品名 | 編集者・撰者 | 作品紹介 |
---|---|---|
万葉集 | 不明(大伴家持?) | 現存最古の古代の和歌集。柿本人麻呂・山辺赤人・山上憶良などの和歌を収録。また、農民・皇族・貴族・官僚歌人など地方の和歌も収録されている。歌風は写実的で力強くおおらか。世にいう「ますらおぶり」。 |
古今和歌集 | 紀友則・紀貫之・凡河内躬恒・壬生忠岑 | 平安時代前期。勅撰和歌集。六歌仙や詠み人知らずの和歌が多く収録されている。和歌を宮中文学として成立させた。万葉集の古風を残した詠み人知らず・基礎が固まった六歌仙・繊細優美な情趣の世界を知的に技巧的に詠んだものの三つに大別される。 |
新古今和歌集 | 源通具・藤原有家・藤原定家・藤原家隆・藤原雅経・寂蓮 | 鎌倉時代前期。勅撰和歌集。西行・藤原俊成などの和歌を収録。歌風は観念的傾向が著しく華麗。また本歌取り・本説・本文など典拠を有する表現が好んで用いられ古典的で難解なものが多い。心像を象徴的に表現して、虚構の世界に優艶余情の美を追求する傾向。 |
説話集よは、神話・伝説・昔話・笑い話など実際あったこととして、人々の間に伝えられたはなしを説話といい、それを記録・編纂したもの。物語と比べて伝承性・事実性に富み、社会の各層の人間の姿を素朴だが生き生きと具体的に書き表されている。
作品名 | 編集者 | 作品紹介 |
---|---|---|
日本霊異記 | 未詳 | 平安時代前期。仏教説話集。善悪の行いが仏力によって現実に報われたことを語る説話。 |
今昔物語集 | 未詳 | 平安時代後期。きわめて行動的な人間を、漢文脈の強い文体で活写している。木z九・武士・庶民・盗賊などさまざまな階層の人間が生き生きと活動する様子がリアルに描かれている。 |
宇治拾遺物語 | 実生 | 鎌倉時代前期。人間の弱点をあばき、権威を相対化することの関心を示している。笑いの要素が顕著で、貴族・既成宗教の権威が崩れ去った時代の思想の影が色濃い。全体的に庶民的な発想で、会話文などにも積極的に取り入れられ軽妙な語り口である。 |
十訓抄 | 六波羅二臈左衛門入道(?) | 鎌倉時代。儒教的立場を表立てているが、王朝文化を情景する個条やきわめて実際的な処世術の個条などが目立つ。 |
作り物語とは、事実に基づかない虚構の物語。
作品名 | 作者 | 作品紹介 |
---|---|---|
竹取物語 | 未詳 | 平安時代。求婚難題談にみられる社会風刺・昇天の談における人間の愛情生活に対する理解が見られる作品。仮名文字の祖。人間の限界・永遠の美を思慕する浪漫的精神を表現している。 |
落窪物語 | 未詳 | 平安時代中期。シンデレラ型の継子いじめの話。継母の虐待に耐えた落窪の姫君が貴公子と結婚し幸せになり、継母が報復を受けるという話の筋。 |
源氏物語 | 紫式部 | 平安時代中期。三部にわけてみることができる。一部は光源氏の多くの女性と関係と運命に導かれ栄華をきわめる様子。二部は苦悩の世界で、最愛の紫の上を失い栄華も内部崩壊する。三部では光源氏の没後で、息子の薫を主人公とした話。 |
うつほ物語 | 源順(?) | 平安時代中期。藤原俊蔭とその娘仲忠、犬宮の四代にわたる霊琴にまつわる音楽霊験談と、源雅頼の娘の貴宮を主人公とする物語が絡み合い展開する物語。美女貴宮への求婚談・皇位継承を巡る源・藤原両家の争いなど貴族社会を写実的に描く。 |
浜松中納言物語 | 菅原孝標女(?) | 平安時代後期。夢に生きる幻想的な転生物語。話が夢告を中心に展開し、舞台が中国に移るなど、浪漫的。 |
狭衣物語 | ばいし内親王の女房 | 平安時代中期。主人公狭衣が意中の源氏宮とは結ばれず、他の女性との関係を重ね、女性らに不幸を招く。狭衣も帝位まで上るが心晴れなかった。 |
歌物語とは、物語分類の一種で、和歌とともにその歌の成立の事情などを述べた短編を集めたもの。
作品名 | 作者 | 作品紹介 |
---|---|---|
伊勢物語 | 未詳 | 在原業平を思わせる男を主人公とした和歌にまつわる短編集。主人公の愛を追求した「みやび」な生き方と優れた和歌は理想視され後世に大きな影響を与えた。 |
大和物語 | 未詳 | 平安時代中期。主に宇多天皇を中心とした廷臣・女性たちに関する和歌説話を集めた部分と伝承的な和歌説話を集めた二部に分けられる。 |
平中物語 | 未詳 | 平安時代中期。歌人で「すき者」として名高い平貞文を主人公とする恋物語。 |
堤中納言物語 | 不明 | 平安時代後期。小式部の作として知られている。短編物語集。平安時代後期の物語の傾向としており、社会の断面を切り取ってユニークに描かれた短編集。 |
日記文学とおは、単なる日常の記録ではなく、筆者の心情や人生観が強く表され優れた文学性を持った作品のこと。
作品名 | 作者 | 作品紹介 |
---|---|---|
土佐日記 | 紀貫之 | 作者が土佐守の任を果たして任地を出発してから京都へ帰着するまでの旅を記したもの。土佐で失った娘の愛着を縦糸とし船中の焦燥・海賊の恐怖・土佐の国人や依頼した隣人に対する風刺などが盛り込まれている。 |
和泉式部日記 | 和泉式部 | 平安時代中期。和泉式部が冷泉天皇の第四皇子敦道親王と知り合ってから、親王邸に引き取られるまでの恋愛の進展の経過を物語風に記したもの。145首もの贈答歌を中心に和歌的情緒にみちた恋愛が展開される。 |
蜻蛉日記 | 藤原道綱母 | 平安時代中期。藤原兼家との結婚のときから21年間のことを記す。兼家との結婚後に一子道綱をはじめ父母、姉妹らとの愛情生活を記したもの。権門の妻となったことで嫉妬や性格の不一致で苦しむ姿が描かれる。 |
紫式部日記 | 紫式部 | 平安時代中期。紫式部の宮仕え記録。中宮彰子の出産を間近に控えた藤原道長邸から始まり、後一条天皇の誕生と続く諸行事の記述が主となる。宮廷生活の克明な記録と言える部分と、同時代の清少納言、和泉式部などの女御たちに対する批評を含んだ随筆的な部分から成る。 |
更級日記 | 菅原孝標女 | 平安時代中期。任果てて上総から帰京する父に伴っての旅からほぼ40年のことが記されている。常に何かに情景し期待して生きた女の生涯の記録。 |
とはずがたり | 後深草院二条 | 鎌倉時代。後深草院の寵を得た年から宮仕えを退くまでの生活を記したもの。名門家の名に恥じぬよう意志的・行動的に人生を切り開いていった中世に生きる女性の姿が赤裸々な心情の表出とともに記されている。 |
随筆とは、ある出来事や季節の移り変わりなどに目をとめ、思いつくままに自由な形式で感想を書きとめたもの。
作品名 | 作者 | 作品紹介 |
---|---|---|
枕草子 | 清少納言 | 平安時代中期。才気縦横の明るい世界を主とする。王朝文化の頂点を形成した。鋭敏な美意識でとらえた宮中生活の記録、または自然や人間観察のスケッチ。 |
方丈記 | 鴨長明 | 鎌倉時代前期。無情厭世の仏教観で貫かれた小編。流麗・簡潔な名分として古来推されている。作者の体験した天変地異や遷都などの世の転変を述べた前半と隠遁生活の楽しさを述べた後半からなる。 |
徒然草 | 兼好法師 | 鎌倉時代後期。人生論・仏教信仰論・人間観・女性論・住居論・趣味論・自然観照を綴った随想・挿話・物語的な小文・雑記など多岐にわたる。 |
歴史物語とは、歴史上の事実に基づいて仮名文で書かれた物語。
作品 | 作者 | 作品紹介 |
---|---|---|
大鏡 | 未詳 | 文徳天皇〜後一条天皇の歴史を列伝体で物語風に叙述し評論している。藤原道長の栄華と人物を主眼に置いている。藤原道長の栄華の裏の政権争奪を鋭くあばいている。 |
栄華物語 | 不詳 | 平安時代後期。宇多天皇〜後一条天皇まで。中心は藤原道長の生涯を称賛する点。彼の一族の栄華、儀式・仏事・遊宴などが記される。 |
軍記物語とは、平安時代末期から鎌倉・室町時代につくられた武士集団の戦闘を主な内容とする叙事文学。
作品名 | 作者 | 作品紹介 |
---|---|---|
平家物語 | 信濃前司長説(?) | 鎌倉時代。編年体と紀伝体を併用して、平氏の興亡を描いた叙事詩的歴史文学。平氏の運命を無常観によって説き、仏教思想が濃い。 |
義経記 | 未詳 | 室町時代前期。準軍記物語、英雄伝記物語とも。前半は義経の幼少時代の兵法修行・弁慶談・東下り。後半は平家討滅後から自害するところまで描かれている。 |
将門記 | 不明 | 平安時代中期。平将門の乱を描く。将門が伯父たちと争い、朝廷に対して反乱をおこし、将門らの首が京にもたらされるまでを、将門に同情する立場から記されている。 |
曽我物語 | 未詳 | 鎌倉時代末期。曽我兄弟の仇討ちの遠縁から記述。兄弟の成長・仇討ちの苦心・仇討ちの成就・兄弟の死および後日談からなる。 |
太平記 | 未詳 | 南北朝時代。南北朝、公武の抗争を描く長編。 |
作品名 | 作者 | 作品紹介 |
---|---|---|
無名草子 | 不明(藤原俊成女?) | 鎌倉時代前期。最勝光院に参った老尼がその夜ある家で女たちが語るのを聞くという体裁をとる。 |
歌謡集とは、曲節をつけて歌う詩や歌の歌謡を編纂したもの。
作品名 | 勅撰 | 作品紹介 |
---|---|---|
梁塵秘抄 | 後白河法皇 | 平安時代後期。広義の今様の歌詞とその伝承についての口伝を集めたもの。当時の風俗・社会などが反映されている。 |
擬古物語とは、平安時代の「作り物語」をまねて、鎌倉・室町時代につくられた主に貴族の恋愛を題材とする物語。
作品名 | 作者 | 作品紹介 |
---|---|---|
住吉物語 | 不詳 | 鎌倉時代前期。左衛門府の姫が継母の奸計を避けて家出し、住吉の尼のもとに身を寄せ、恋人に迎えられて帰京、幸福な生活を送り継母は報復を受ける。 |
小夜衣 | 未詳 | 鎌倉時代。恋愛物語に継子いじめをからませた作品。 |
苔の衣 | 未詳 | 鎌倉時代。前半は継子もの、後半は恋愛物語。貴族三代の愛別離苦・人生無常の運命を描く。 |